高校化学では、付加重合と縮合重合という二つの重合反応を学び、ポリエチレンやナイロン6,6などの代表的な高分子を覚えます。
重合度 $n$ を使って分子量を $M = nM_0$($M_0$ は繰り返し単位のモル質量)と計算しますが、この $n$ はあたかも一つの確定した値であるかのように扱われます。
しかし実際の高分子は、鎖の長さがバラバラな分子の混合物です。
大学化学では、ラジカル重合の開始・成長・停止という三段階の反応機構を通じて、なぜ分子量にばらつきが生じるのかを理解します。
その結果、高分子の分子量を特徴づけるには数平均分子量 $M_n$ と重量平均分子量 $M_w$ という二つの量が必要になり、
その比 $M_w / M_n$(多分散度)が分布の幅を表すことを学びます。
さらに、縮合重合ではカロザースの式がモノマー転化率と重合度の関係を定量的に与えます。
高校化学では、高分子化合物の合成反応を大きく二つに分類します。
高校では、これらの重合反応の生成物(ポリマー)について、繰り返し単位の構造式を書くことが求められます。 分子量は「繰り返し単位のモル質量 $M_0$ × 重合度 $n$」として計算します。 たとえばポリエチレンの繰り返し単位 $\text{-CH}_2\text{-CH}_2\text{-}$ のモル質量は $28 \; \text{g/mol}$ なので、重合度が $1000$ のポリエチレンの分子量は $28 \times 1000 = 28000$ と求めます。
この計算では、重合度 $n$ を一つの確定した数として扱います。 しかし、実際に合成されたポリエチレンの鎖は、すべてが $n = 1000$ ではありません。 $n = 800$ の鎖もあれば $n = 1200$ の鎖もあります。 高校ではこの点には触れず、「平均の重合度」として一つの値を与えて計算します。 次のセクションでは、大学の視点からこの問題を正面から扱います。
大学化学では、重合反応の機構(どのような段階を経てポリマー鎖が成長するのか)を分析します。 この機構を知ると、ポリマー鎖の長さがなぜばらつくのかが自然に理解できます。 さらに、ばらつきを定量的に記述するための道具として、数平均分子量 $M_n$ と重量平均分子量 $M_w$ を導入します。
この記事を読み終えると、以下のことができるようになります。
1. ラジカル重合の開始・成長・停止の三段階を説明し、鎖の長さがばらつく理由を機構に基づいて述べられる
2. 数平均分子量 $M_n$ と重量平均分子量 $M_w$ の定義を述べ、具体的な分子量データから計算できる
3. 多分散度 $M_w / M_n$ の意味を理解し、それが 1 に近いほど均一な分布であることを説明できる
4. カロザースの式を使って、縮合重合における転化率と重合度の関係を定量的に計算できる
では、まず付加重合の代表例であるラジカル重合の機構を詳しく見ていきます。 この機構の中に、分子量が分布をもつ根本的な理由が隠れています。
高校では、エチレンの付加重合を「二重結合が開いてつながる」と習います。 しかし、二重結合は自発的に開くわけではありません。 実際には、反応を始めるための「きっかけ」が必要です。 大学化学では、付加重合の最も基本的な型であるラジカル重合(radical polymerization)を三段階に分けて分析します。
ラジカル重合では、不対電子(ペアを組んでいない電子)をもつ化学種、すなわちラジカルが反応の主役です。 ラジカルは非常に反応性が高く、近くの二重結合に素早く付加します。 高校で学んだ二重結合の反応性(📖 C-14-1)を思い出すと、二重結合の $\pi$ 結合は $\sigma$ 結合より弱く、反応しやすいのでした。 ラジカルはこの $\pi$ 結合を攻撃して新しい $\sigma$ 結合をつくり、鎖を伸ばしていきます。
まず、開始剤(initiator)と呼ばれる物質を加えます。 開始剤は熱や光で分解し、ラジカルを生成します。 代表的な開始剤に過酸化ベンゾイル(BPO)があり、加熱すると $\text{O-O}$ 結合が切れて2個のラジカルを生じます。
生成したラジカル $\text{R}\cdot$ は、モノマー(例えばエチレン $\text{CH}_2\text{=CH}_2$)の二重結合に付加し、新たなラジカルをもつ化学種を生みます。
$$\text{R}\cdot + \text{CH}_2\text{=CH}_2 \longrightarrow \text{R-CH}_2\text{-}\dot{\text{C}}\text{H}_2$$
ここで重要なのは、反応後も不対電子が消えていないことです。 ラジカルが一つの二重結合に付加すると、不対電子は鎖の末端に移動します。 つまり、反応の「種」が次に引き継がれます。
鎖の末端にラジカルをもつ種は、次のモノマー分子の二重結合に付加し、さらに鎖を伸ばします。 この反応が繰り返されるたびに、鎖は1単位ずつ長くなります。
$$\text{R-CH}_2\text{-}\dot{\text{C}}\text{H}_2 + \text{CH}_2\text{=CH}_2 \longrightarrow \text{R-CH}_2\text{-CH}_2\text{-CH}_2\text{-}\dot{\text{C}}\text{H}_2$$
成長反応は非常に速く、1本の鎖は数千回以上の成長反応を経て長い高分子鎖になります。 成長反応1回あたりの時間は極めて短い(ミリ秒のオーダー)ため、鎖全体の成長は1秒以内に完了することもあります。
成長中の鎖は、不対電子が消滅することで成長を停止します。 停止の主な方法は二つです。
分子量が分布をもつ根本的な理由は、成長反応と停止反応が競合することにあります。
ある鎖は成長反応を1000回繰り返した後に停止反応で止まり、別の鎖は500回で停止し、さらに別の鎖は2000回まで伸びてから止まります。 どの鎖がいつ停止するかは確率的に決まるため、最終的に得られるポリマーはさまざまな長さの鎖の混合物になります。
これが、高分子の分子量が「一つの値」ではなく「分布」をもつ理由です。
ここまでで、ラジカル重合の三段階を通じて鎖の長さがばらつくことがわかりました。 次のセクションでは、この分布を定量的に記述するための道具、すなわち数平均分子量 $M_n$ と重量平均分子量 $M_w$ を導入します。
セクション3で見たように、ラジカル重合で得られるポリマーは、さまざまな分子量をもつ鎖の集まりです。 この集まりの特徴を表すために、「平均分子量」を定義する必要があります。 しかし、平均のとり方にはいくつかの方法があり、それぞれ異なる意味をもちます。
最も素朴な平均は、すべての分子の分子量を足して、分子の数で割る方法です。 これを数平均分子量(number-average molar mass)$M_n$ と呼びます。
$$M_n = \frac{\displaystyle\sum_i N_i M_i}{\displaystyle\sum_i N_i}$$
$N_i$:分子量が $M_i$ である分子の数、$M_i$:各分子の分子量
この式は、「分子の個数」を重みとした加重平均です。 分子を1本ずつ数えたときの平均分子量に対応します。 浸透圧測定や末端基分析などの実験から求められます。
具体例で確認します。あるポリマー試料に、分子量 $10000$ の鎖が 3 本、分子量 $30000$ の鎖が 1 本あるとします。このとき、
$$M_n = \frac{3 \times 10000 + 1 \times 30000}{3 + 1} = \frac{60000}{4} = 15000$$
これは日常的な「平均」の感覚と同じです。しかし、この平均だけでは情報が不十分な場合があります。
もう一つの平均のとり方は、各分子の寄与をその質量で重みづけする方法です。 これを重量平均分子量(weight-average molar mass)$M_w$ と呼びます。
$$M_w = \frac{\displaystyle\sum_i N_i M_i^2}{\displaystyle\sum_i N_i M_i}$$
$N_i$:分子量が $M_i$ である分子の数、$M_i$:各分子の分子量
この式は、「分子の質量」を重みとした加重平均です。 分子量の大きい鎖ほど大きな重みを受けます。 光散乱法(溶液にレーザー光を当てたときの散乱強度から求める方法)から実験的に得られます。
先ほどと同じ例(分子量 $10000$ が 3 本、$30000$ が 1 本)で $M_w$ を計算します。
$$M_w = \frac{3 \times 10000^2 + 1 \times 30000^2}{3 \times 10000 + 1 \times 30000} = \frac{3 \times 10^8 + 9 \times 10^8}{30000 + 30000} = \frac{1.2 \times 10^9}{60000} = 20000$$
$M_n = 15000$ に対して $M_w = 20000$ と、$M_w$ の方が大きくなりました。 これは偶然ではありません。$M_w$ は質量で重みづけするため、重い分子の寄与が大きくなり、必ず $M_w \geq M_n$ が成り立ちます。
$M_w$ と $M_n$ の比は、分布の幅を表す指標として使われます。
$$\text{PDI} = \frac{M_w}{M_n} \geq 1$$
PDI(polydispersity index)とも呼ばれます。 すべての分子の分子量が同じ(完全に均一)であれば $M_w / M_n = 1$ です。 分布の幅が広がるほど $M_w / M_n$ は 1 より大きくなります。 通常のラジカル重合では $M_w / M_n \approx 1.5 \sim 2.0$ 程度になります。
先ほどの例では $M_w / M_n = 20000 / 15000 = 1.33$ です。
誤解:高校で使う「分子量」は、正確に定義された一つの値である。
正しい理解:高校で使う「分子量 = $nM_0$」は、実質的に $M_n$(数平均分子量)に相当します。 しかし実際のポリマーでは $M_n$ と $M_w$ が異なるため、「分子量」と一口に言っても、どちらの平均を指しているかを明示する必要があります。 物性(粘度、強度など)に大きく影響するのは $M_w$ の方であることが多く、工業的にはどちらも重要な指標です。
ここまでで、付加重合(ラジカル重合)の機構と分子量分布の記述方法を学びました。 次のセクションでは、もう一つの重合形式である縮合重合を取り上げ、転化率と重合度の関係を定量化するカロザースの式を導出します。
セクション3ではラジカル重合(付加重合の一種)を扱いましたが、ここではもう一つの重合形式である縮合重合について、大学の視点から定量的に分析します。
縮合重合は、ラジカル重合とは根本的に異なる機構で進行します。 ラジカル重合では、成長中の鎖の末端にラジカルがあり、そこにモノマーが1つずつ付加していきました。 一方、縮合重合では、任意の2つの分子(モノマー同士、モノマーとオリゴマー、オリゴマー同士)が反応できます。
たとえば、ナイロン6,6の合成では、ジアミン($\text{-NH}_2$ を2つもつ)とジカルボン酸($\text{-COOH}$ を2つもつ)が反応してアミド結合($\text{-CO-NH-}$)を形成し、水 $\text{H}_2\text{O}$ が脱離します。 反応の「きっかけ」となるラジカルは不要であり、官能基どうしが出会えば反応が進みます。 その結果、重合の進行は「どれだけの官能基が反応したか」(転化率)によって特徴づけられます。
最初にモノマーの官能基が合計 $N_0$ 個あったとし、そのうち反応によって消費された官能基の割合を転化率 $p$ と定義します。
$$p = \frac{N_0 - N}{N_0}$$
ここで $N$ は未反応の官能基の数です。$p = 0$ なら反応は始まっていない状態、$p = 1$ なら全官能基が反応し終えた状態を意味します。
反応が進むと、モノマーやオリゴマーがつながって長い鎖になるため、系中の分子数が減少します。 最初の分子数を $N_0 / 2$(二官能性モノマーなら、モノマー1分子あたり官能基2個なので)とすると、 転化率 $p$ のとき残っている分子数は $(N_0 / 2)(1 - p)$ です。 数平均重合度 $\overline{X_n}$(1分子あたり平均何個の繰り返し単位を含むか)は、次の式で与えられます。
$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 - p}$$
$\overline{X_n}$:数平均重合度、$p$:官能基の転化率($0 \leq p < 1$)
この式は、ウォーレス・カロザース(ナイロンの発明者)によって導かれた関係です。 「初期の分子数 ÷ 現在の分子数」という比から得られます。 重合度は転化率 $p$ が 1 に近づくにつれて急激に大きくなることを示しています。
前提:二官能性モノマー(各分子が官能基を2個もつ)$N_0 / 2$ 分子からなる系を考えます。官能基の総数は $N_0$ です。
ステップ1:転化率 $p$ のとき、反応した官能基は $N_0 p$ 個です。1回の縮合反応で官能基が2個消費される(一方が $\text{-COOH}$、他方が $\text{-NH}_2$ など)ので、結合が形成された回数は $N_0 p / 2$ 回です。
ステップ2:1回の結合形成で系内の分子数が1つ減ります(2分子が1分子になる)。したがって、分子数は初期の $N_0 / 2$ から $N_0 p / 2$ だけ減り、残りの分子数は次の通りです。
$$\frac{N_0}{2} - \frac{N_0 p}{2} = \frac{N_0}{2}(1 - p)$$
ステップ3:数平均重合度は「初期のモノマー数 ÷ 現在の分子数」です。
$$\overline{X_n} = \frac{N_0 / 2}{(N_0 / 2)(1 - p)} = \frac{1}{1 - p}$$
この式の帰結を具体的な数値で確認します。
| 転化率 $p$ | 数平均重合度 $\overline{X_n}$ | 意味 |
|---|---|---|
| 0.50 | 2 | 平均して2量体(ダイマー) |
| 0.90 | 10 | まだ短いオリゴマー |
| 0.99 | 100 | ようやく高分子と呼べる長さ |
| 0.999 | 1000 | 実用的な高分子 |
転化率 $p = 0.90$(90%の官能基が反応済み)でも、重合度はわずか10です。 実用的な高分子(重合度が数百以上)を得るには、$p$ を $0.99$ 以上にする必要があります。 つまり、縮合重合で高分子量のポリマーを得るには、極めて高い転化率が必要です。 このことは工業的に重要であり、反応系から水を除去して平衡を生成物側に偏らせるなどの工夫が行われます。
ラジカル重合では、成長反応が非常に速く、1本の鎖が短時間で高分子量に達します。 反応系の中には「すでに停止した長い鎖」と「まだモノマーのままの分子」が共存します。 そのため、反応の途中で取り出したポリマーでも、個々の鎖はすでに高分子量です。
一方、縮合重合では、すべての分子が少しずつ成長するため、反応初期にはダイマーやトリマーばかりです。 転化率が上がるにつれて徐々に鎖が長くなります。 理論的には、縮合重合で最確分布(most probable distribution)が実現する場合、$M_w / M_n = 1 + p$ となり、$p \to 1$ で $M_w / M_n \to 2$ に近づきます。
ここまでで、付加重合(ラジカル重合)と縮合重合の両方について、大学の視点から分析しました。 次のセクションでは、これらの知識を使って具体的な計算問題を解きます。
あるポリスチレン試料について、以下の分子量分布データが得られたとします。 スチレンの繰り返し単位 $\text{-CH}_2\text{-CH(C}_6\text{H}_5\text{)-}$ のモル質量は $104 \; \text{g/mol}$ です。
| 分子量 $M_i$(g/mol) | 分子数の割合 $N_i$ |
|---|---|
| $5.0 \times 10^4$ | 100 |
| $1.0 \times 10^5$ | 200 |
| $2.0 \times 10^5$ | 150 |
| $5.0 \times 10^5$ | 50 |
$M_n$ の計算:
$$M_n = \frac{\sum N_i M_i}{\sum N_i} = \frac{100 \times 5.0 \times 10^4 + 200 \times 1.0 \times 10^5 + 150 \times 2.0 \times 10^5 + 50 \times 5.0 \times 10^5}{100 + 200 + 150 + 50}$$
分子:$5.0 \times 10^6 + 2.0 \times 10^7 + 3.0 \times 10^7 + 2.5 \times 10^7 = 8.0 \times 10^7$($\sum N_i M_i$)
分母:$500$
$$M_n = \frac{8.0 \times 10^7}{500} = 1.6 \times 10^5 \; \text{g/mol}$$
$M_w$ の計算:
$$M_w = \frac{\sum N_i M_i^2}{\sum N_i M_i}$$
分子:$100 \times (5.0 \times 10^4)^2 + 200 \times (1.0 \times 10^5)^2 + 150 \times (2.0 \times 10^5)^2 + 50 \times (5.0 \times 10^5)^2$
$= 2.5 \times 10^{11} + 2.0 \times 10^{12} + 6.0 \times 10^{12} + 1.25 \times 10^{13} = 2.075 \times 10^{13}$
分母:$8.0 \times 10^7$($M_n$ の計算で求めた $\sum N_i M_i$ と同じ)
$$M_w = \frac{2.075 \times 10^{13}}{8.0 \times 10^7} = 2.59 \times 10^5 \; \text{g/mol}$$
多分散度:
$$\frac{M_w}{M_n} = \frac{2.59 \times 10^5}{1.6 \times 10^5} = 1.62$$
この値はラジカル重合で典型的に見られる範囲($1.5 \sim 2.0$)にあります。 $M_w$ が $M_n$ より大きいのは、分子量 $5.0 \times 10^5$ の長い鎖が質量ベースで大きく寄与するためです。
ナイロン6,6の合成で、数平均重合度 $\overline{X_n} = 200$ を達成したいとします。 カロザースの式から必要な転化率 $p$ を求めます。
$$\overline{X_n} = \frac{1}{1 - p}$$
$\overline{X_n} = 200$ を代入して $p$ について解くと、
$$200 = \frac{1}{1 - p} \quad \Longrightarrow \quad 1 - p = \frac{1}{200} = 0.005 \quad \Longrightarrow \quad p = 0.995$$
つまり、99.5% の官能基を反応させる必要があります。 ナイロン6,6の繰り返し単位 $\text{-NH-(CH}_2\text{)}_6\text{-NH-CO-(CH}_2\text{)}_4\text{-CO-}$ のモル質量は $226 \; \text{g/mol}$ なので、 この場合の数平均分子量は次の通りです。
$$M_n = \overline{X_n} \times M_0 = 200 \times 226 = 45200 \; \text{g/mol}$$
工業的なナイロン6,6の分子量は典型的に $M_n = 10000 \sim 50000 \; \text{g/mol}$ 程度であり、この計算結果は妥当な範囲にあります。
カロザースの式の帰結として、転化率のわずかな違いが重合度に大きな影響を与えることを確認します。 転化率が $p = 0.99$ と $p = 0.999$ の場合を比較します。
$$p = 0.99 \;:\; \overline{X_n} = \frac{1}{1 - 0.99} = \frac{1}{0.01} = 100$$
$$p = 0.999 \;:\; \overline{X_n} = \frac{1}{1 - 0.999} = \frac{1}{0.001} = 1000$$
転化率がわずか $0.9\%$ 上がっただけで、重合度は $100$ から $1000$ へと10倍になります。 この急峻な依存性が、縮合重合における反応条件の精密な制御を必要とする理由です。
Q1. ラジカル重合で、鎖の長さがばらつく理由を、反応機構に基づいて簡潔に説明してください。
Q2. 分子量 $20000$ の鎖が 4 本、分子量 $60000$ の鎖が 1 本あるポリマー試料の $M_n$ と $M_w$ を求めてください。
Q3. カロザースの式において、転化率 $p = 0.98$ のときの数平均重合度 $\overline{X_n}$ を求めてください。
Q4. $M_w / M_n = 1$ になるのはどのような場合ですか。
ラジカル重合の三段階(開始・成長・停止)それぞれについて、何が起こるかを1〜2文で説明してください。 また、三段階のうち鎖の長さを決定するのはどの段階の競合ですか。
開始:開始剤が分解してラジカルを生成し、そのラジカルがモノマーの二重結合に付加して成長の起点となる。
成長:鎖末端のラジカルが次々にモノマーの二重結合に付加し、鎖が伸びていく。
停止:2つの成長中のラジカル末端が再結合するか、不均化反応によって不対電子が消滅し、鎖の成長が止まる。
鎖の長さを決定するのは、成長反応と停止反応の競合です。成長反応が何回起こった後に停止反応が起きるかによって、最終的な鎖長が決まります。
あるポリマー試料は、分子量 $1.0 \times 10^4$ の鎖が 200 本、$5.0 \times 10^4$ の鎖が 300 本、$1.0 \times 10^5$ の鎖が 100 本からなります。 $M_n$、$M_w$、$M_w / M_n$ を求めてください。
$\sum N_i = 200 + 300 + 100 = 600$
$\sum N_i M_i = 200 \times 1.0 \times 10^4 + 300 \times 5.0 \times 10^4 + 100 \times 1.0 \times 10^5$
$= 2.0 \times 10^6 + 1.5 \times 10^7 + 1.0 \times 10^7 = 2.7 \times 10^7$
$$M_n = \frac{2.7 \times 10^7}{600} = 4.5 \times 10^4 \; \text{g/mol}$$
$\sum N_i M_i^2 = 200 \times (1.0 \times 10^4)^2 + 300 \times (5.0 \times 10^4)^2 + 100 \times (1.0 \times 10^5)^2$
$= 2.0 \times 10^{10} + 7.5 \times 10^{11} + 1.0 \times 10^{12} = 1.77 \times 10^{12}$
$$M_w = \frac{1.77 \times 10^{12}}{2.7 \times 10^7} = 6.56 \times 10^4 \; \text{g/mol}$$
$$\frac{M_w}{M_n} = \frac{6.56 \times 10^4}{4.5 \times 10^4} = 1.46$$
$M_w > M_n$ となるのは、分子量 $1.0 \times 10^5$ の長い鎖が質量ベースで大きく寄与するためです。多分散度 $1.46$ はラジカル重合としてはやや狭い分布であり、比較的均一な試料であることを示しています。
ポリエチレンテレフタラート(PET)を縮合重合で合成します。 繰り返し単位のモル質量は $192 \; \text{g/mol}$ です。 数平均分子量 $M_n = 19200 \; \text{g/mol}$ を達成するために必要な転化率 $p$ を求めてください。
数平均重合度は $\overline{X_n} = M_n / M_0 = 19200 / 192 = 100$ です。
カロザースの式より、
$$100 = \frac{1}{1 - p} \quad \Longrightarrow \quad 1 - p = 0.01 \quad \Longrightarrow \quad p = 0.99$$
99% の転化率が必要です。
PETはペットボトルの原料として広く使われるポリエステルです。重合度100を達成するだけでも99%の転化率が必要であり、実用的なPETではさらに高い転化率が求められます。工業的には減圧下で副生するエチレングリコールを除去し、平衡を生成物側に偏らせます。
あるポリマー試料の分子量分布データが以下の通り与えられています。
| 分子量 $M_i$(g/mol) | 分子数 $N_i$ |
|---|---|
| $1.0 \times 10^4$ | 50 |
| $3.0 \times 10^4$ | 100 |
| $5.0 \times 10^4$ | 100 |
| $1.0 \times 10^5$ | 50 |
(a) $M_n$ と $M_w$ を計算してください。
(b) 多分散度 $M_w / M_n$ を求め、この値が示す分布の特徴を述べてください。
(c) 仮にこの試料から分子量 $1.0 \times 10^5$ の鎖をすべて除去した場合、$M_n$ と $M_w / M_n$ はどう変化しますか。定性的に(増加・減少・不変のいずれか)答え、理由を述べてください。
(a)
$\sum N_i = 50 + 100 + 100 + 50 = 300$
$\sum N_i M_i = 50 \times 1.0 \times 10^4 + 100 \times 3.0 \times 10^4 + 100 \times 5.0 \times 10^4 + 50 \times 1.0 \times 10^5$
$= 5.0 \times 10^5 + 3.0 \times 10^6 + 5.0 \times 10^6 + 5.0 \times 10^6 = 1.35 \times 10^7$
$$M_n = \frac{1.35 \times 10^7}{300} = 4.5 \times 10^4 \; \text{g/mol}$$
$\sum N_i M_i^2 = 50 \times (1.0 \times 10^4)^2 + 100 \times (3.0 \times 10^4)^2 + 100 \times (5.0 \times 10^4)^2 + 50 \times (1.0 \times 10^5)^2$
$= 5.0 \times 10^9 + 9.0 \times 10^{10} + 2.5 \times 10^{11} + 5.0 \times 10^{11} = 8.45 \times 10^{11}$
$$M_w = \frac{8.45 \times 10^{11}}{1.35 \times 10^7} = 6.26 \times 10^4 \; \text{g/mol}$$
(b)
$$\frac{M_w}{M_n} = \frac{6.26 \times 10^4}{4.5 \times 10^4} = 1.39$$
$M_w / M_n = 1.39$ は比較的1に近い値であり、分子量分布が比較的狭い(鎖の長さが比較的均一な)試料であることを示しています。
(c)
$M_n$ は減少します。最も重い鎖を除去すると、残った鎖の平均分子量が下がるためです。
具体的には、除去後の $M_n = (1.35 \times 10^7 - 5.0 \times 10^6) / (300 - 50) = 8.5 \times 10^6 / 250 = 3.4 \times 10^4$ です。
$M_w / M_n$ は減少します。分子量が最も大きい成分を除去すると分布の高分子量側の裾が短くなり、分布の幅が狭まるためです。 実際に計算すると、除去後の $M_w = (8.45 \times 10^{11} - 5.0 \times 10^{11}) / (1.35 \times 10^7 - 5.0 \times 10^6) = 3.45 \times 10^{11} / 8.5 \times 10^6 = 4.06 \times 10^4$ となり、$M_w / M_n = 4.06 \times 10^4 / 3.4 \times 10^4 = 1.19$ に減少します。