第1章 原子の構造

イオン化エネルギーと電気陰性度
─ 有効核電荷による統一的理解

高校化学では、イオン化エネルギーや電気陰性度の周期的な傾向を「周期表の右上ほど大きい」「希ガスの直後で急に下がる」といったパターンとして覚えます。 原子半径についても「同周期で右に行くほど小さい」「同族で下に行くほど大きい」と習います。 これらの傾向はそれぞれ別々に暗記する必要があり、「なぜそうなるのか」という疑問には十分に答えることができません。

大学化学では、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ という一つの量を導入します。 原子核の正電荷は、内側の電子による遮蔽(しゃへい)を受けて弱まり、最外殻の電子が実際に感じる核電荷は原子番号 $Z$ よりも小さくなります。 この「実際に感じる核電荷」が有効核電荷です。 スレーターの規則という計算法を使って $Z_{\text{eff}}$ を求めると、イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度、原子半径の周期的傾向が、すべて一つの原理から導かれることがわかります。

1高校での扱い ─ 傾向の暗記

高校化学では、原子の性質に関する周期的な傾向を次のように学びます。

  • イオン化エネルギー:原子から電子1個を取り去るのに必要なエネルギー。同周期では右に行くほど大きく、同族では下に行くほど小さい。希ガスで極大をとる。
  • 電子親和力:原子が電子1個を受け取るときに放出するエネルギー。ハロゲンで特に大きい。
  • 電気陰性度:共有結合において原子が電子を引きつける強さの尺度。フッ素が最大(4.0)。周期表の右上ほど大きい。
  • 原子半径:同周期では右に行くほど小さく、同族では下に行くほど大きい。

これらの傾向は高校の教科書や問題集に周期表とともにまとめられており、テストでは「第3周期でイオン化エネルギーが最大の元素は何か」のような問題が出されます。 しかし、「なぜ右に行くほど大きくなるのか」「なぜ同族で下に行くほど小さくなるのか」「なぜイオン化エネルギーと原子半径の傾向が逆になるのか」について、高校では十分な説明がなされません。 結果として、4つの傾向をそれぞれ別々に暗記することになります。

次のセクションでは、大学の視点を導入することで、これらの傾向がたった一つの量から統一的に理解できることを確認します。

2大学の視点で何が変わるか ─ 有効核電荷という統一原理

大学化学では、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$(effective nuclear charge)という量を導入します。 原子核は $+Ze$ の正電荷を持っていますが、最外殻の電子から見ると、内側の電子が核の正電荷を部分的に「遮蔽」(shielding)しています。 その結果、最外殻の電子が実際に感じる核電荷は $Z$ よりも小さくなります。この「実際に感じる核電荷」が有効核電荷です。

高校 vs 大学:周期的傾向をどう理解するか
高校:傾向をパターンとして暗記する
「イオン化エネルギーは右上ほど大きい」「原子半径は左下ほど大きい」などを個別に覚える。
4つの傾向を別々に暗記する。
大学:有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ から全てを導く
$Z_{\text{eff}}$ が大きい → 電子を強く引きつける → イオン化エネルギー大・原子半径小・電気陰性度大、とすべてが連動する。
覚えるべき原理は一つだけ。
高校:電気陰性度は「原子固有の値」
ポーリングの電気陰性度の値を表から読み取る。
大学:電気陰性度は「定義されたスケール」
実測値ではなく、ポーリングが結合エネルギーの差から定義した量であることを理解する。有効核電荷と矛盾しない理由もわかる。
有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ ── 周期的傾向の統一原理

この記事を読み終えると、以下のことができるようになります。

1. 有効核電荷 $Z_{\text{eff}} = Z - \sigma$ の意味を説明し、スレーターの規則を使って任意の原子の $Z_{\text{eff}}$ を計算できる

2. $Z_{\text{eff}}$ の大小から、イオン化エネルギーの周期的傾向を導くことができる

3. $Z_{\text{eff}}$ の大小から、原子半径の周期的傾向を導くことができる

4. 電気陰性度が「実測値」ではなく「定義されたスケール」であることを説明でき、その傾向が $Z_{\text{eff}}$ と矛盾しない理由を述べられる

5. 高校で暗記していた4つの傾向が、$Z_{\text{eff}}$ という一つの量の変化として統一的に理解できる

$Z_{\text{eff}}$ を使うためには、「内側の電子がどの程度核電荷を遮蔽するか」を定量的に見積もる方法が必要です。 次のセクションで、その計算法であるスレーターの規則を導入します。

3有効核電荷とスレーターの規則

なぜ有効核電荷が必要か

原子番号 $Z$ の原子には、原子核に $Z$ 個の陽子があり、$Z$ 個の電子がその周りを回っています。 最外殻の電子が感じる原子核の引力は、単純に $+Ze$ の力ではありません。 内側の軌道を占める電子が、核の正電荷を部分的に打ち消すからです。

たとえばナトリウム(Na, $Z = 11$)を考えます。 Na の電子配置は $1s^2 \, 2s^2 \, 2p^6 \, 3s^1$ です(📖 第1章 §2 で解説した構成原理に従います)。 最外殻の $3s$ 電子から見ると、内側に10個の電子があり、これらが核電荷 $+11e$ を大幅に遮蔽します。 その結果、$3s$ 電子が「実際に感じる」核電荷は $+11e$ よりもはるかに小さくなります。

この「実際に感じる核電荷」を有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ と呼びます。

有効核電荷の定義

$$Z_{\text{eff}} = Z - \sigma$$

$Z$:原子番号(原子核の陽子の数)、$\sigma$:遮蔽定数(内側の電子による遮蔽の大きさ)

$\sigma$ が大きいほど、内側の電子が核電荷を強く遮蔽しているため、最外殻の電子が感じる核電荷 $Z_{\text{eff}}$ は小さくなります。 $Z_{\text{eff}}$ の値が大きいほど、その電子は核に強く引きつけられています。

ここで問題になるのは、遮蔽定数 $\sigma$ をどのように見積もるかです。 これを簡便に計算する方法がスレーターの規則(Slater's rules, 1930年)です。

スレーターの規則

スレーターの規則は、多電子原子の遮蔽定数 $\sigma$ を、電子の配置から経験的に計算するための規則です。 水素原子のシュレーディンガー方程式の厳密解と、多電子原子の実測データをもとに、スレーターが考案しました。 厳密な量子力学的計算の近似であり、「導出値」に分類されます。

まず電子を、次のグループに分けます。

$(1s) \;|\; (2s, 2p) \;|\; (3s, 3p) \;|\; (3d) \;|\; (4s, 4p) \;|\; (4d) \;|\; (4f) \;|\; \cdots$

同じ主量子数の $s$ 軌道と $p$ 軌道は一つのグループにまとめます(📖 第1章 §1 で導入した量子数の分類に対応します)。 $d$ 軌道と $f$ 軌道は、同じ主量子数の $s, p$ とは別グループにします。

注目する電子が属するグループより右(外側)のグループの電子は、遮蔽に寄与しません($\sigma$ に含めません)。 注目する電子と同じグループ、またはそれより左(内側)のグループの電子が遮蔽に寄与します。 各電子の遮蔽への寄与は、以下の規則で決まります。

寄与する電子の位置 注目する電子が $ns$ または $np$ の場合 注目する電子が $nd$ または $nf$ の場合
同じグループ内の他の電子 各 $0.35$(ただし $1s$ の場合は $0.30$) 各 $0.35$
一つ内側の $(n{-}1)$ グループの電子 各 $0.85$ 各 $1.00$
二つ以上内側のグループの電子 各 $1.00$ 各 $1.00$

この表の数値は暗記する必要はありません。重要なのは、以下の定性的な意味です。

  • 同じグループの電子は遮蔽効果が小さい($0.35$)。同じ殻にいる電子同士は、核からの距離がほぼ同じなので、互いに遮蔽する効果が限定的です。
  • 一つ内側のグループはかなり大きな遮蔽効果を持つ($0.85$ または $1.00$)。核と注目電子の間に位置するため、核電荷を効率的に打ち消します。
  • 二つ以上内側のグループはほぼ完全に遮蔽する($1.00$)。核にごく近い電子は、注目電子から見るとほぼ核電荷を $-1e$ ずつ打ち消します。

計算例:Na($Z = 11$)の最外殻電子の $Z_{\text{eff}}$

Na の電子配置は $1s^2 \, 2s^2 \, 2p^6 \, 3s^1$ です。 $3s$ 電子について $Z_{\text{eff}}$ を計算します。グループ分けは $(1s)|(2s, 2p)|(3s)$ です。

Na の $3s$ 電子に対する $Z_{\text{eff}}$ の計算

ステップ1:注目する電子は $3s$($ns$ なので左列の規則を使う)。

ステップ2:同じグループ $(3s)$ の他の電子 → 0個($3s$ に入っている電子は注目している1個だけ)。

ステップ3:一つ内側のグループ $(2s, 2p)$ の電子 → 8個、各 $0.85$ の寄与。$8 \times 0.85 = 6.80$

ステップ4:二つ以上内側のグループ $(1s)$ の電子 → 2個、各 $1.00$ の寄与。$2 \times 1.00 = 2.00$

ステップ5:遮蔽定数 $\sigma = 0 + 6.80 + 2.00 = 8.80$

結果:$Z_{\text{eff}} = Z - \sigma = 11 - 8.80 = 2.20$

Na の原子核は $+11e$ の電荷を持っていますが、最外殻の $3s$ 電子が実際に感じている核電荷は $+2.20e$ に過ぎません。 10個の内殻電子が核電荷の大部分を遮蔽しているためです。

計算例:Cl($Z = 17$)の最外殻電子の $Z_{\text{eff}}$

Cl の電子配置は $1s^2 \, 2s^2 \, 2p^6 \, 3s^2 \, 3p^5$ です。 $3p$ 電子について $Z_{\text{eff}}$ を計算します。グループ分けは $(1s)|(2s, 2p)|(3s, 3p)$ です。

Cl の $3p$ 電子に対する $Z_{\text{eff}}$ の計算

ステップ1:注目する電子は $3p$($np$ なので左列の規則を使う)。

ステップ2:同じグループ $(3s, 3p)$ の他の電子 → 6個($3s^2 3p^5$ のうち注目している1個を除いた6個)、各 $0.35$ の寄与。$6 \times 0.35 = 2.10$

ステップ3:一つ内側のグループ $(2s, 2p)$ の電子 → 8個、各 $0.85$ の寄与。$8 \times 0.85 = 6.80$

ステップ4:二つ以上内側のグループ $(1s)$ の電子 → 2個、各 $1.00$ の寄与。$2 \times 1.00 = 2.00$

ステップ5:遮蔽定数 $\sigma = 2.10 + 6.80 + 2.00 = 10.90$

結果:$Z_{\text{eff}} = Z - \sigma = 17 - 10.90 = 6.10$

Cl の最外殻電子が感じる有効核電荷は $6.10$ であり、Na の $2.20$ に比べてはるかに大きい値です。 Na と Cl は同じ第3周期の元素ですが、Cl は原子番号が大きい分だけ陽子が多く、しかも追加された電子は同じグループ($3s, 3p$)に入るため遮蔽効果が小さい(各 $0.35$ しか寄与しない)からです。

ここまでで、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ の計算法を手に入れました。 次のセクションでは、この $Z_{\text{eff}}$ を使って、イオン化エネルギーの周期的傾向を定量的に理解します。

4有効核電荷からイオン化エネルギーを理解する

イオン化エネルギーと有効核電荷の関係

第一イオン化エネルギー(以下、イオン化エネルギー)は、基底状態の気体原子から電子1個を取り去るのに必要な最小エネルギーです。 これは実験で直接測定される実測値です。

電子を取り去るために必要なエネルギーは、その電子が核にどれだけ強く束縛されているかで決まります。 有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ が大きいほど、最外殻電子は核に強く引きつけられているので、取り去るのに必要なエネルギーも大きくなります。 水素型原子のエネルギー準位(📖 第1章 §1)を参考にすると、おおまかに次の関係が成り立ちます。

$$E_{\text{IE}} \propto \frac{Z_{\text{eff}}^2}{n^2}$$

ここで $n$ は最外殻電子の主量子数です。 つまり、イオン化エネルギーは $Z_{\text{eff}}$ が大きいほど大きく、主量子数 $n$ が大きい(核から遠い殻にいる)ほど小さくなります。

同周期での傾向:$Z_{\text{eff}}$ が増加する

同じ周期の元素を左から右に見ていくとき、何が起こるかを $Z_{\text{eff}}$ で理解します。 第3周期(Na から Ar)について、最外殻電子の $Z_{\text{eff}}$ をスレーターの規則で計算すると次のようになります。

元素 $Z$ 電子配置 $\sigma$ $Z_{\text{eff}}$
Na 11 $[\text{Ne}] \, 3s^1$ $8.80$ $2.20$
Mg 12 $[\text{Ne}] \, 3s^2$ $9.15$ $2.85$
Al 13 $[\text{Ne}] \, 3s^2 3p^1$ $9.50$ $3.50$
Si 14 $[\text{Ne}] \, 3s^2 3p^2$ $9.85$ $4.15$
P 15 $[\text{Ne}] \, 3s^2 3p^3$ $10.20$ $4.80$
S 16 $[\text{Ne}] \, 3s^2 3p^4$ $10.55$ $5.45$
Cl 17 $[\text{Ne}] \, 3s^2 3p^5$ $10.90$ $6.10$
Ar 18 $[\text{Ne}] \, 3s^2 3p^6$ $11.25$ $6.75$

Na から Ar に向かって $Z_{\text{eff}}$ は $2.20 \to 6.75$ と単調に増加しています。 これは次の理由によります。元素が一つ右に進むごとに、陽子が1個増え($Z$ が $+1$)、電子も1個増えます。 しかし、追加された電子は同じグループ($3s, 3p$)に入るため、遮蔽への寄与は $0.35$ しかありません。 $Z$ は $+1$ 増えるのに $\sigma$ は $+0.35$ しか増えないので、差し引き $Z_{\text{eff}}$ は $+0.65$ ずつ増加します。

同周期で $Z_{\text{eff}}$ が増加する理由

同周期で右に進むと、陽子が1個増え電子も1個増えます。しかし、追加された電子は同じグループに入るため、遮蔽効果は小さい(各 $0.35$)。核電荷の増分($+1$)が遮蔽の増分($+0.35$)を上回るので、$Z_{\text{eff}}$ は右に行くほど大きくなります。

$Z_{\text{eff}}$ が大きいほど最外殻電子は核に強く束縛されるので、イオン化エネルギーは同周期で右ほど大きくなります。これが、高校で暗記していた「同周期で右ほどイオン化エネルギーが大きい」の理由です。

同族での傾向:$n$ が増加する

同族の元素を上から下に見ていくとき、$Z_{\text{eff}}$ はどうなるでしょうか。 アルカリ金属(第1族)を例にとります。

元素 $Z$ 最外殻 $Z_{\text{eff}}$ $n$ $Z_{\text{eff}}^2 / n^2$
Li 3 $2s$ $1.30$ 2 $0.42$
Na 11 $3s$ $2.20$ 3 $0.54$
K 19 $4s$ $2.20$ 4 $0.34$
Rb 37 $5s$ $2.20$ 5 $0.19$

同族で下に行くと、$Z_{\text{eff}}$ 自体はほぼ一定か緩やかに増加しますが、主量子数 $n$ が大きくなります。 電子は核からより遠い殻に位置するため、$Z_{\text{eff}}^2 / n^2$ の値は下に行くほど小さくなります。 その結果、イオン化エネルギーは同族で下に行くほど小さくなります。

たとえば K($Z = 19$)の $4s$ 電子の $Z_{\text{eff}}$ を確認します。 電子配置は $1s^2 \, 2s^2 \, 2p^6 \, 3s^2 \, 3p^6 \, 4s^1$ です。グループ分けは $(1s)|(2s,2p)|(3s,3p)|(4s)$ です。 同グループに他の電子はなく、一つ内側 $(3s,3p)$ の8個が各 $0.85$、さらに内側の $(2s,2p)$ の8個と $(1s)$ の2個が各 $1.00$ の寄与をします。 $\sigma = 8 \times 0.85 + 10 \times 1.00 = 6.80 + 10.00 = 16.80$、$Z_{\text{eff}} = 19 - 16.80 = 2.20$ です。 Na と同じ $Z_{\text{eff}} = 2.20$ ですが、$n$ が $3 \to 4$ に増えたため、$Z_{\text{eff}}^2/n^2$ は小さくなっています。

「周期が下がると遮蔽が増えるからイオン化エネルギーが下がる」は不十分

不正確な説明:「下の周期ほど内殻電子が多いので遮蔽が大きくなり、$Z_{\text{eff}}$ が小さくなるからイオン化エネルギーが下がる」

正しい理解:上の表で見た通り、アルカリ金属では $Z_{\text{eff}}$ はほぼ同じ値です。 イオン化エネルギーが下がる主な理由は、$n$ が大きくなること(電子が核から遠い殻にいること)です。 $Z_{\text{eff}}$ の変化と $n$ の増大の両方を考慮する必要があります。

ここまでで、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ を使ってイオン化エネルギーの周期的傾向(同周期で右ほど大きい、同族で下ほど小さい)を定量的に説明しました。 次のセクションでは、同じ $Z_{\text{eff}}$ を使って、電子親和力・電気陰性度・原子半径の傾向も統一的に理解します。

5有効核電荷から電子親和力・電気陰性度・原子半径を理解する

原子半径 ─ $Z_{\text{eff}}$ が大きいほど電子雲は縮む

原子の大きさは、最外殻電子の軌道の広がりで決まります。 電子軌道の大きさは、主量子数 $n$ が大きいほど広がり、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ が大きいほど縮みます。 水素型原子のボーア半径を参考にすると、おおまかに次の関係が成り立ちます。

$$r \propto \frac{n^2}{Z_{\text{eff}}}$$

この式は、セクション4のイオン化エネルギーの関係 $E_{\text{IE}} \propto Z_{\text{eff}}^2/n^2$ と表裏一体です。 $Z_{\text{eff}}$ が大きいほど電子は核に強く引きつけられる(電子雲が縮む)ので、原子半径は小さくなり、同時にイオン化エネルギーは大きくなります。

同周期の傾向:右に進むと $Z_{\text{eff}}$ が増加し(セクション4で確認)、$n$ は同じなので、原子半径は小さくなります。 同族の傾向:下に進むと $n$ が増加し、$Z_{\text{eff}}$ はほぼ同程度なので、原子半径は大きくなります。

高校で暗記していた「同周期で右ほど原子半径が小さい」「同族で下ほど原子半径が大きい」が、$Z_{\text{eff}}$ と $n$ の変化から自然に導かれます。 そして「イオン化エネルギーが大きい元素ほど原子半径が小さい」という相関が、両方の量が $Z_{\text{eff}}$ に依存していることから必然的に出てきます。

電子親和力 ─ 電子を受け取る側の $Z_{\text{eff}}$

電子親和力は、中性原子が電子1個を受け取って陰イオンになるときに放出されるエネルギーです。 これも実験で測定される実測値です。

電子親和力の大きさも、$Z_{\text{eff}}$ で理解できます。 新たに追加される電子が感じる有効核電荷が大きいほど、その電子は核に強く引きつけられ、より多くのエネルギーが放出されます。

たとえば、Cl($Z = 17$)が電子を1個受け取って $\text{Cl}^-$ になる場合を考えます。 追加される電子は $(3s, 3p)$ グループに入ります。 セクション3で計算した通り、Cl の $3p$ 電子に対する $Z_{\text{eff}} = 6.10$ です。 新たに入る電子に対しても、同様に大きな $Z_{\text{eff}}$ が作用します(同グループの電子が1個増えるため、追加電子にとっての $Z_{\text{eff}}$ はやや小さくなりますが、それでも十分に大きい値です)。

一方、Na($Z = 11$)が電子を受け取る場合、追加される電子は $(3s)$ グループの2個目に入り、 $Z_{\text{eff}} = 2.20$ 程度しかありません。 したがって、Cl は Na より電子親和力が大きく、電子を受け取りやすいことが $Z_{\text{eff}}$ から理解できます。

電気陰性度 ─ 実測値ではなく定義されたスケール

ここまで、イオン化エネルギー、電子親和力、原子半径という3つの量を有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ で統一的に理解してきました。 4つ目の量である電気陰性度についても、$Z_{\text{eff}}$ との関連を見ていきます。

まず重要な点を確認します。電気陰性度は実測値ではありません。 電気陰性度は、ポーリング(Linus Pauling)が1932年に定義したスケールです。

ポーリングの電気陰性度(定義)

ポーリングは、A-B 結合のエネルギー $D(\text{A-B})$ が、A-A 結合と B-B 結合のエネルギーの相乗平均 $\sqrt{D(\text{A-A}) \cdot D(\text{B-B})}$ よりも大きくなることに着目しました。 この差を $\Delta$ とおきます。

$$\Delta = D(\text{A-B}) - \sqrt{D(\text{A-A}) \cdot D(\text{B-B})}$$

ポーリングは、$\Delta$ が A と B の電気陰性度の差の二乗に比例するとして、次のように電気陰性度を定義しました。

$$|\chi_{\text{A}} - \chi_{\text{B}}| = 0.102 \sqrt{\Delta}$$

ここで $\chi$ は電気陰性度、$\Delta$ は kJ/mol 単位の結合エネルギー差です。 フッ素を $\chi_{\text{F}} = 4.0$ と基準に定め、各元素の電気陰性度が決められています。

電気陰性度は「原子が結合中の電子をどれだけ引きつけるか」の尺度として定義されたものであり、 原子固有の物理量を直接測定した値ではありません。結合エネルギー(実測値)から計算される導出値であり、スケールの基準(F = 4.0)は規約です。

電気陰性度は有効核電荷から直接計算されるものではありませんが、両者の間には明確な相関があります。 $Z_{\text{eff}}$ が大きい原子は、結合中の電子を強く引きつけるため、電気陰性度も大きくなります。

実際、マリケン(Mulliken)は電気陰性度を別の方法で定義しました。マリケンの電気陰性度は、イオン化エネルギーと電子親和力の平均値として定義されます。

$$\chi_{\text{Mulliken}} = \frac{E_{\text{IE}} + E_{\text{EA}}}{2}$$

イオン化エネルギーも電子親和力も $Z_{\text{eff}}$ に依存する量ですから、マリケンの電気陰性度も $Z_{\text{eff}}$ に依存します。 ポーリングの電気陰性度とマリケンの電気陰性度は、異なる定義に基づいていますが、元素間の大小関係はほぼ一致します。 どちらの定義でも「$Z_{\text{eff}}$ が大きいほど電気陰性度が大きい」という傾向は変わりません。

4つの周期的傾向は $Z_{\text{eff}}$ の変化に帰着する

有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ が大きい原子では、

1. 最外殻電子が核に強く束縛される → イオン化エネルギーが大きい

2. 電子雲が核に引き寄せられて縮む → 原子半径が小さい

3. 追加の電子も強く引きつけられる → 電子親和力が大きい

4. 結合中の電子を強く引きつける → 電気陰性度が大きい

4つの傾向は独立した事実ではなく、$Z_{\text{eff}}$ という一つの量の大小として統一的に理解できます。同周期で右ほど $Z_{\text{eff}}$ が大きくなるため、4つの傾向がすべて連動します。

希ガスの電子親和力と電気陰性度

希ガス(He, Ne, Ar など)は閉殻構造を持つため、イオン化エネルギーが大きいにもかかわらず、電子親和力はほぼゼロ(または負の値)です。 追加の電子は次の殻($n$ が1つ大きい軌道)に入る必要があり、その電子にとっての $Z_{\text{eff}}$ は非常に小さくなります。 このため、希ガスは電子を受け取ることにエネルギー的な利得がほとんどありません。

同様に、ポーリングの電気陰性度は希ガスには定義されていません。 希ガスは通常の化学結合をほとんど形成しないため、結合エネルギーに基づく定義が適用できないからです。

ここまでで、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ からイオン化エネルギー、原子半径、電子親和力、電気陰性度の4つの傾向を統一的に説明しました。 次のセクションでは、$Z_{\text{eff}}$ を使った具体的な計算と予測に取り組みます。

6応用 ─ 有効核電荷を使った具体的な計算と予測

第2周期の $Z_{\text{eff}}$ とイオン化エネルギーの実測値

有効核電荷がイオン化エネルギーの大小を実際に予測できることを、第2周期(Li〜Ne)で確認します。

元素 $Z$ 電子配置 $Z_{\text{eff}}$(スレーター) 第一イオン化エネルギー(実測値, kJ/mol)
Li 3 $1s^2 \, 2s^1$ $1.30$ $520$
Be 4 $1s^2 \, 2s^2$ $1.95$ $900$
B 5 $1s^2 \, 2s^2 2p^1$ $2.60$ $801$
C 6 $1s^2 \, 2s^2 2p^2$ $3.25$ $1086$
N 7 $1s^2 \, 2s^2 2p^3$ $3.90$ $1402$
O 8 $1s^2 \, 2s^2 2p^4$ $4.55$ $1314$
F 9 $1s^2 \, 2s^2 2p^5$ $5.20$ $1681$
Ne 10 $1s^2 \, 2s^2 2p^6$ $5.85$ $2081$

$Z_{\text{eff}}$ は Li の $1.30$ から Ne の $5.85$ まで単調に増加しており、全体としてイオン化エネルギーも増加しています。 しかし、B と O のところで実測値が前の元素より小さくなっています。 スレーターの規則では同じグループ内の $s$ と $p$ を区別しないため、$Z_{\text{eff}}$ は単調増加になりますが、実測のイオン化エネルギーにはこの例外が現れます。

B のイオン化エネルギーが Be より小さいのは、B の最外殻電子が $2p$ 軌道に入っているためです。 $2p$ 軌道は $2s$ 軌道よりもエネルギーが高く(📖 第1章 §2)、取り除きやすくなります。 O のイオン化エネルギーが N より小さいのは、O の $2p$ 軌道に電子が2個入った軌道(電子対)があり、電子間反発によって一方の電子が不安定化しているためです。

つまり、$Z_{\text{eff}}$ は大きな傾向を正しく予測しますが、$s/p$ 軌道のエネルギー差や電子対の反発といった細かな効果までは捉えきれません。 それでも、「右に行くほどイオン化エネルギーが大きい」という全体的な傾向は、$Z_{\text{eff}}$ の増加で十分に説明できます。

F と Cl の $Z_{\text{eff}}$ 比較 ── 電気陰性度の大小の根拠

フッ素(F, $Z = 9$)と塩素(Cl, $Z = 17$)のどちらが電気陰性度が大きいかを、$Z_{\text{eff}}$ から予測してみます。

F の最外殻 $2p$ 電子の $Z_{\text{eff}} = 5.20$(上の表)、Cl の最外殻 $3p$ 電子の $Z_{\text{eff}} = 6.10$(セクション3で計算済み)です。 $Z_{\text{eff}}$ だけを見ると Cl の方が大きいのですが、F の最外殻電子は $n = 2$、Cl は $n = 3$ であり、F の電子の方が核に近くにいます。 $Z_{\text{eff}}/n$ で比較すると、F は $5.20/2 = 2.60$、Cl は $6.10/3 = 2.03$ となり、F の方が大きくなります。

F の最外殻電子は核に近い位置で大きな有効核電荷を感じているため、結合中の電子を非常に強く引きつけます。 これが、フッ素の電気陰性度($\chi = 4.0$)が塩素($\chi = 3.2$)より大きい理由です。 主量子数 $n$ の違いを考慮すれば、$Z_{\text{eff}}$ による予測と実際の電気陰性度の大小関係は一致します。

Na と Mg のイオン化エネルギーの定量的な比較

スレーターの規則で求めた $Z_{\text{eff}}$ を使い、Na と Mg のイオン化エネルギーの比を推定します。 $E_{\text{IE}} \propto Z_{\text{eff}}^2/n^2$ を使い、Na と Mg は同じ $n = 3$ なので次のように計算できます。

$$\frac{E_{\text{IE}}(\text{Mg})}{E_{\text{IE}}(\text{Na})} \approx \frac{Z_{\text{eff}}(\text{Mg})^2}{Z_{\text{eff}}(\text{Na})^2} = \frac{2.85^2}{2.20^2} = \frac{8.12}{4.84} = 1.68$$

実測値は Na が 496 kJ/mol、Mg が 738 kJ/mol であり、比は $738/496 = 1.49$ です。 スレーターの規則の推定値($1.68$)は正確な一致ではありませんが、「Mg は Na より明確に大きい」という傾向を正しく予測しています。 簡便な経験則としては十分な精度です。

7つながりマップ

まとめ
  • 有効核電荷 $Z_{\text{eff}} = Z - \sigma$ は、内殻電子の遮蔽を考慮した「最外殻電子が実際に感じる核電荷」です。 スレーターの規則を使うと、電子配置から $\sigma$ を計算して $Z_{\text{eff}}$ を見積もることができます。
  • 同周期で右に進むと、$Z$ が $+1$ 増えるのに対して $\sigma$ は $+0.35$ しか増えないため、$Z_{\text{eff}}$ は右ほど大きくなります。 これにより、イオン化エネルギーと電気陰性度は右ほど大きく、原子半径は右ほど小さくなります。
  • 同族で下に進むと、$Z_{\text{eff}}$ はほぼ一定ですが、主量子数 $n$ が大きくなります。 電子が核から遠い殻にいるため、イオン化エネルギーは小さくなり、原子半径は大きくなります。
  • 電気陰性度は実測値ではなく、ポーリングが結合エネルギーの差から定義したスケールです。 ただしその大小は $Z_{\text{eff}}$(と $n$)の変化と整合しており、有効核電荷による統一的な理解と矛盾しません。
  • イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度、原子半径の4つの周期的傾向は、別々に暗記するのではなく、 $Z_{\text{eff}}$ という一つの量の変化として統一的に理解できます。

9確認テスト

理解度チェック

Q1. Na($Z = 11$)の $3s$ 電子に対する有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ をスレーターの規則で計算すると、いくらになりますか。計算過程も示してください。

クリックして解答を表示 グループ分けは $(1s)|(2s, 2p)|(3s)$ です。同グループの他の電子は 0 個。一つ内側 $(2s, 2p)$ の 8 個が各 $0.85$ で $6.80$。二つ以上内側 $(1s)$ の 2 個が各 $1.00$ で $2.00$。よって $\sigma = 8.80$、$Z_{\text{eff}} = 11 - 8.80 = 2.20$ です。

Q2. 同周期で右に進むと有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ が増加する理由を、「陽子の増加」と「遮蔽の増加」の大小関係に着目して説明してください。

クリックして解答を表示 元素が一つ右に進むごとに陽子が 1 個増え($Z$ が $+1$)、電子も 1 個増えます。しかし追加された電子は同じグループに入るため、遮蔽定数 $\sigma$ への寄与は $0.35$ に過ぎません。$Z$ の増分($+1$)が $\sigma$ の増分($+0.35$)を上回るので、差し引き $Z_{\text{eff}}$ は $+0.65$ ずつ増加します。

Q3. 電気陰性度が「実測値」ではないとはどういう意味ですか。ポーリングの定義に触れながら説明してください。

クリックして解答を表示 電気陰性度は原子そのものの物理量を直接測定した値ではありません。ポーリングは、A-B 結合のエネルギーが A-A と B-B の相乗平均よりも大きいことに着目し、その差 $\Delta$ から電気陰性度の差を $|\chi_{\text{A}} - \chi_{\text{B}}| = 0.102\sqrt{\Delta}$ と定義しました。フッ素を $\chi = 4.0$ と基準に定め、結合エネルギーという実測値から導出されたスケールです。

Q4. イオン化エネルギーと原子半径の周期的傾向が「逆」になる理由を、有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ を使って説明してください。

クリックして解答を表示 イオン化エネルギーは $Z_{\text{eff}}^2/n^2$ におおむね比例し、原子半径は $n^2/Z_{\text{eff}}$ におおむね比例します。同周期で右に進むと $Z_{\text{eff}}$ が増加するので、イオン化エネルギーは大きくなり、同時に原子半径は小さくなります。両方の量が $Z_{\text{eff}}$ に依存しているため、傾向が逆になるのは必然です。

10演習問題

問1 A 基本

有効核電荷 $Z_{\text{eff}} = Z - \sigma$ の式において、$Z$、$\sigma$、$Z_{\text{eff}}$ のそれぞれが「実測値」「定義・規約」「導出値」のいずれに分類されるかを答え、その理由を簡潔に述べてください。

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解答

$Z$(原子番号):実測値。原子核の陽子の数であり、実験で直接確認できる物理量です。

$\sigma$(遮蔽定数):導出値。スレーターの規則は、水素原子の厳密解と実測データを基にした経験的な近似計算法です。$\sigma$ は電子配置から計算で求められます。

$Z_{\text{eff}}$(有効核電荷):導出値。$Z$(実測値)と $\sigma$(導出値)の差として計算で得られる量です。

問2 B 計算

スレーターの規則を用いて、以下の原子の最外殻電子に対する有効核電荷 $Z_{\text{eff}}$ をそれぞれ計算してください。

(a) C($Z = 6$、電子配置 $1s^2 \, 2s^2 2p^2$)

(b) O($Z = 8$、電子配置 $1s^2 \, 2s^2 2p^4$)

(c) (a)(b) の結果から、C と O のどちらがイオン化エネルギーが大きいか予測し、その理由を述べてください。

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解答

(a) C:グループ分けは $(1s)|(2s, 2p)$ です。注目する電子は $2p$。同グループの他の電子は 3 個($2s^2$ と $2p$ のうち自分以外の 1 個)で、各 $0.35$ の寄与。一つ内側 $(1s)$ の 2 個が各 $0.85$。

$\sigma = 3 \times 0.35 + 2 \times 0.85 = 1.05 + 1.70 = 2.75$

$Z_{\text{eff}} = 6 - 2.75 = 3.25$

(b) O:同グループの他の電子は 5 個($2s^2 2p^4$ のうち自分以外の 5 個)で、各 $0.35$ の寄与。一つ内側 $(1s)$ の 2 個が各 $0.85$。

$\sigma = 5 \times 0.35 + 2 \times 0.85 = 1.75 + 1.70 = 3.45$

$Z_{\text{eff}} = 8 - 3.45 = 4.55$

(c) O の $Z_{\text{eff}}$($4.55$)は C の $Z_{\text{eff}}$($3.25$)より大きく、両者とも $n = 2$ なので、O の方がイオン化エネルギーが大きいと予測できます。実測値は C が $1086$ kJ/mol、O が $1314$ kJ/mol であり、予測と一致します。

問3 B 計算

F($Z = 9$)と Cl($Z = 17$)について、最外殻電子に対する $Z_{\text{eff}}$ を計算し、さらに $Z_{\text{eff}}/n$ の値を比較してください。 この結果から、F と Cl のどちらの電気陰性度が大きいと予測できるか、理由とともに答えてください。

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解答

F($1s^2 \, 2s^2 2p^5$):同グループ $(2s, 2p)$ の他の電子 6 個が各 $0.35$、$(1s)$ の 2 個が各 $0.85$。$\sigma = 2.10 + 1.70 = 3.80$。$Z_{\text{eff}} = 9 - 3.80 = 5.20$。$Z_{\text{eff}}/n = 5.20/2 = 2.60$

Cl($1s^2 \, 2s^2 2p^6 \, 3s^2 3p^5$):セクション3で計算済み。$Z_{\text{eff}} = 6.10$。$Z_{\text{eff}}/n = 6.10/3 = 2.03$

$Z_{\text{eff}}/n$ は F($2.60$)の方が Cl($2.03$)より大きいので、F の方が結合中の電子を強く引きつけ、電気陰性度が大きいと予測できます。実際、ポーリングの電気陰性度は F が $4.0$、Cl が $3.2$ です。

問4 C 論述

第2周期のイオン化エネルギーの実測値を見ると、Be から B にかけて値が減少しています(Be: 900 kJ/mol → B: 801 kJ/mol)。 スレーターの規則で計算した $Z_{\text{eff}}$ は Be($1.95$)→ B($2.60$)と増加しているにもかかわらず、なぜイオン化エネルギーは減少するのか、 軌道のエネルギー準位に言及しながら説明してください。

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解答

Be の最外殻電子は $2s$ 軌道にあり、B の最外殻電子は $2p$ 軌道にあります。 同じ主量子数 $n = 2$ でも、$2p$ 軌道は $2s$ 軌道よりもエネルギーが高い(核からの束縛が弱い)ため、$2p$ 電子は $2s$ 電子よりも取り除きやすくなっています。

スレーターの規則では $2s$ と $2p$ を同じグループとして扱うため、この効果を反映できません。 $Z_{\text{eff}}$ の増加は B の方が大きな核電荷を感じていることを意味しますが、$2s \to 2p$ の軌道エネルギーの上昇がそれを上回り、結果としてイオン化エネルギーは Be > B となります。

これはスレーターの規則の限界の一つであり、$s$ と $p$ の軌道エネルギー差(貫入効果の違い)を考慮すると理解できます。